2023年10月10日火曜日

「Plantagenet」(GMT)をやるなら薔薇戦争のこの2冊(その2)

  映画「ロスト・キング 500年越しの運命」、ウォーゲーマー界隈だったら見られた方も多いんじゃないでしょうか。いやーもうね、今は駐車場となっているところにRって書かれていて、その下にリチャードが埋まっているなんて、実話なんだけどもうほんと、運命的ですよね。あの映画見たらリチャード三世好きになる人、多いんじゃないかなあ。

 それに、歴史を知らなくても映画としても楽しめました。レスター大学関係者の言動を見ていると、自分もやっちゃいそうって思ってしまいましたよ。とほほ。


 …いや、今回は映画の話をするつもりじゃなかったんだ。今回紹介するのは、薔薇戦争関連の書籍、『Blood Royal』です。前回紹介した『Battle Royal』の続きにあたり、1461年にタウトンの戦いでヨーク派が大勝したその後からを描きます。エドワード四世、タウトンの後も結構苦労していて、1471年のバーネットとチュークスベリーの戦いでやっと国内が安定するんですな。…ということをもう他の本で読んだはずなのになあ。自分の記憶力のなさよ…。


 まあそんなことより、リチャード三世ですよ、リチャード三世。この本ではどんな風に描かれているのかなと興味津々だったんですけど、比較的バランスが取れた描写という印象。リチャードの軍事的能力についてはちゃんと認めていまし、対スコットランドのリチャードの戦いも記述しています。でもリチャード擁護派のいわゆるRicardianにはちょっと辟易している感じで、

the defining Ricardian dogma - that Richard III's black villainy was an invention of Tudor propagandists - was always skating on thin ice.

とか、

It is far more debatable whether Richard deserved a handsome tomb monument in Leicester Cathedral with 'Loyaulte me lie' inscribed without irony on the plinth.

なんて書いていますね。あ、 'Loyaulte me lie'っていうのはリチャードのモットーで、「忠誠が我を縛る」という意味になるようで、すべての書類にこの言葉を書いていたそうですね。そういえば映画「ロスト・キング」のボズワースの古戦場のシーンでも、リチャードの旗にLOYAULTEって書かれているのを見つけて嬉しくなりましたよ。

 筆者はRicardianよりではないということをにおわせつつ、それでも、リチャードが生まれたFotheringhayの城跡が現代のRicardianの神殿になっている、なんて紹介してくれていますね。注でちっちゃくだけど。


 ボズワースやバーネットなど、主な戦いは戦況図だけでなく、戦いに至るまでの両軍の動きを図で示してくれていて、ウォーゲーマーとしては嬉しくなりました。あと、ボズワースの戦いにはヘンリー側にフランス軍が多く加わっていたのはよく知られていると思いますが、フランス部隊の指揮官が、長方形やひし形の隊形で歩兵が長いパイクと短めのハルバードを組み合わせて使うという、大陸では一般的になっていた戦い方をイギリス軍に教えた、なんてことが書いていありましたね。


 もちろん戦いだけでなく貴族たちの政治的な動きも詳述してあるんですけど、登場人物が多いので、ときどき誰が誰やらわからなくなりましたよ。外国人が日本の戦国時代の本を読んだときもこんな感じなのかなあ。それと、自分の薔薇戦争の基礎知識ってGJ65号付録ゲームの「薔薇戦争」なんですけど、あのゲームだとウォリックのレーティングが3-6で、さすがキングメーカー、強ええって思っていました。でもこの本を読んでいると、軍事的な能力はそれほどでもなかったのかな、という気になります。もちろん政治的な力は大きいってのはちゃんと描写されていて、They have but two rulers, M. de Warwick and another whose name I have forgotten.っていう有名な言葉も出てきます。


 この本を読んで個人的に一番の収穫だったのが、イギリスの周辺国、フランスだけでなく特にブルゴーニュ公国のことが結構書かれていたことかな。「La Trêve ou l'Epée」(Ludifolie)というゲームで、エドワード四世とルイ11世が衝突していたら、という仮想戦が入っているんだけど、その前後の状況がよくわかりました。同じゲームに入っているGuinegatteの戦いも、この本でちょろっと触れられていて個人的には嬉しい。あと、ハンザ同盟のかかわりについてもちょっと触れられていて、いろんな知識がつながる感じでした。

 

 それと結構、女性の動きが描かれているんですよね。ヘンリー6世の妃マーガレットは当然としても、エリザベス・ウッドヴィルの母親のジャケット・ド・リュクサンブールとか、いろんな女性が及ぼした影響に触れていて面白かったんですけど、本の最後のほうで「イギリスの歴史においてこの時代ほど女性が影響力を持ったことはなかったのだ」なんて書いていました。


 ということで『Battle Royal』と『Blood Royal』、2冊セットで読むのをおススメします。薔薇戦争のゲーム、なんかやりたくなるなあ。


2023年9月23日土曜日

「アウエルシュタットの戦いは、どの場所で始まったのか?」に便乗して

 DSSSMさんがブログに書かれていたんですがアウエルシュタットの戦いがどこで始まったかについて、資料によってはHassenhausenのほかに、Poppelという記述があるそうです。いやーしかし、いろんな資料に当たられてすごいなー。

このDSSSMさんのブログを受けて、Bernadotte66さんが『Campagne de Prusse, 1806』というフランス語の資料はHassenhausen説をとっていると紹介されていました。
アウエルシュタットの戦い開始位置

自分もちょっと興味をひかれて調べてみました。ただ前もって断っておくと、私はナポレオニックは全然知りません。すみません。

で、見つけたのが、ご当地Hassenhausen博物館のサイト。
http://museum-hassenhausen.de

Auerstedtにプロイセン軍の司令部が置かれていて、Hassenhausenで戦いが行われた

と書かれていますね。
(原文は
In Auerstedt war das königlich- preußische Hauptquartier, Hassenhausen war der Ort, an dem die größere der beiden Schlachten ausgetragen wurd
ここのdie größere der beiden Schlachtenでアウエルシュタットの戦いを指しているようですが、イエナよりアウエルシュタットの戦いのほうが大きかったんですかね??)

ちなみに、Bernadotte66さんが紹介していた『Campagne de Prusse, 1806』では

王自らがそこ(ブリュッヒャー率いる前衛部隊)にいて、先頭に立って行進した。
Le Roi y était en personne et marchait à la tete.

なんてことが書かれてあって、両軍が遭遇した際にプロイセン王が陣頭に立っていたみたいに読めるんですけど、そんなことってあるんですかね。
戦いから約80年後の1887年に出された本のようですけど、当時はそういう説が有力だったのかな。
ちなみにこちらで全ページ公開されています。
https://archive.org/details/campagnedepruss01foucgoog/pag...

あと、Poppel説のほうもちょっと調べてみたところ、

普軍の先頭に立っていた竜騎兵がPoppel村とTaugwitz村の近くで仏騎兵の小部隊に遭遇し撃退した。

という趣旨の記述を見つけました。
http://preussenweb.de/jena.htm

プロイセンの歴史好きの方がやっている(いた)らしいサイトで、結構詳しく調べている印象ですが、残念ながら参照元の文献などが明記されていないです。でもRegiment Königin-Dragoner(女王竜騎兵連隊)なんてのがあるんですね。知らなかった。

ちなみに、イエナ・アウエルシュタットの戦いの博物館Museum 1806なんてのも見つけました。
https://www.stadtmuseum-jena.de/de/822701
5年ごとにイエナの戦いを再現しているようですね。気合入ってるなー。軍装とかぜんぜんわからないんですけど。

2023年9月15日金曜日

「Plantagenet」(GMT)をやるなら薔薇戦争のこの2冊(その1)

  Levy & Campaignシリーズの新作「Plantagenet」(GMT)が出ましたね。今回は薔薇戦争。薔薇戦争と言えば、Dan Jonesの『The Hollow Crown』の和訳、出ないですかね、薔薇戦争の本って日本語だとあんまりないし、とつぶやいていたら、「Plantagenet」のデザイナーFrancisco Gradaille氏が『Battle Royal』と『Blood Royal』という本をおススメしてくれました。


デザイナーさんご本人から推薦図書を教えてもらえるなんてラッキー、と思っていたら、この2冊、「Plantagenet」のBackground Bookで参考資料として真っ先に挙げてあるんですよね。でも教えてもらえたのはうれしいです。

 ということでさっそく読んでみました。この2冊、セットになっていて、『Battle Royal』は薔薇戦争の前半を、『Blood Royal』は後半をカバーしています。今回紹介するのは『Battle Royal』のほうなんですけど、薔薇戦争って言ったら一般的には1455年の第一次セント・オールバンズの戦いから始まると考えられているようですが、日本語ででている『薔薇戦争』や『薔薇戦争新史』、それに先述した『The Hollow Crown』と同様、『Battle Royal』もそれよりもっと前から書き起こしています。

 薔薇戦争っていろんな貴族が出てきて、それがまたややこしいんですよね。しかも爵位で呼ばれたりするから、これどのサマセットだよ、となったりして。SalisburyがキングメーカーWarwickの父親だってつい忘れそうになるし。まあ、自分の知識不足のなせる業ですが。しかも親子で同じ名前だったりするのがさらにややこしい。でもこの本ではランカスター家やヨーク家だけでなく、ボーフォートやネヴィルと言った家系についても説明してくれていて、なんとなく人間関係がわかるようになってきました。

 でもまあ、やっぱり興味があるのはもっと軍事的な面なので、読んでいて第一次セント・オールバンズ戦以降のほうが面白かったです。重要な戦いは戦況図付きで説明してくれているうえ、戦場までのアプローチがわかる道路網の図も載せてあって、両軍の機動がわかりやすくなっていました。薔薇戦争の最大の戦いともいわれるタウトンの戦いなんか、金属探知機を使って10年以上かけて戦場を調べた人がいるらしくて、金属反応が多いところがおそらく激戦だっただろうということがわかる図まで載せていました。こういう地道な調査はありがたいですよね。それに『Battle Royal』は2015年に出ているんですが、こういう最近の知見も入っているのが嬉しいです。

 それと、the English were renowned for their ferocity and were not temperamentally suited to positional warfare, which may explain why castle played such a peripheral role in the conflict.なんて書いてあって、そういや薔薇戦争で攻城戦って聞かないな、やっぱ中世のイングランド人って血の気が多いのかなってなんか納得しました。

 騎行(chevachée)と身代金という二つの戦費調達手段が薔薇戦争では封じられていたという指摘も、ちょっと新鮮でした。少し考えれば当然だとわかることですけどね、ははは。だって内戦で騎行のようなぺんぺん草も生えないような略奪は行えないし、薔薇戦争で貴族が殺されまくったというのは有名ですしね。

 あと、薔薇戦争の主要登場人物の一人、ヘンリー六世王妃マーガレットについて結構書かれていたのも勉強になりました。フランスから嫁いできたってのは知っていたけど、頼りないヘンリー六世に代わってランカスター派を切り盛りした、ぐらいのイメージしかなくて、仏王シャルル七世の姪だったとか、どこかで読んだことがあったかもしれないんですけどすっかり忘れていましたよ。マーガレットの母親のイザベル・ド・ロレーヌも女傑だったようで、マーガレットはgrew up witnessing how strong women could make something of weak menなんて書かれていました。


 というわけで薔薇戦争についてもっと知りたい、という人にはいいんじゃないでしょうか。でも「Plantagenet」(GMT)をやるなら、とか偉そうにタイトルに掲げておきながら、自分はまだ買っていないんですよね。すみません。地道に計画的な部隊運用を要求されるゲームって、なんか気後れしてしまって。テーマ的にはドンピシャなんですけどね。今のところAARを見て楽しんでいます。

2023年9月1日金曜日

「Land and Freedom」関連書籍その4 ジョージ・オーウェル『カタロニア賛歌』

 スペイン内戦を描いたゲーム「Land and Freedom」ではジョージ・オーウェルもカードになっているんですよね。

なので、オーウェルの著書『カタロニア賛歌』を読んでみました。オーウェルは義勇兵としてスペイン内戦に参加しているんだけど、POUMの民兵として戦っているんですよ。あのPOUMですよ。映画「Land and Freedom」を見た人だったら熱くなるんじゃないでしょうか。

 でもオーウェルの作品は『1984年』と『パリ・ロンドンどん底生活』しか読んだことがなくて、前者はまあ読んでおいたほうがいいかなぐらいの気持ちで手に取ったんだけど、個人的にはうーん、あんまりはまりませんでした。でも『パリ・ロンドンどん底生活』のほうは、ぐはー、おもしれーとむさぼるように読んでしまい、あまりの印象の違いに同じ筆者が書いたとは思えないぐらい。(まあ、両方とも和訳は読んでいないので、日本語で読むとまた受け止め方が変わるのかもしれませんが…)

 『カタロニア賛歌』はどうだろうな、と思って読み始めてみたら、いやこれまた面白かったです。前線での生活やら市街戦やらでの体験が一人称で書かれているんだけど、淡々とした感じででもリアリティを感じさせるんですよね。敵陣に夜襲をかけているところとか。あと、のどを喉を撃たれるんですけど、しゃべろうとすると口の中に血が泡になって溢れてくるみたいなこと書いていて、いやーよく生きていたなと思います。

 それと、『誰がために鐘は鳴る』を読んでいたときはワインを飲むシーンが結構出てきて自分もワインがほしくなったけど、この本ではそんなことなかったな。というか、物資の欠乏をいろんなところで書いていて、まあそれが現実だったんでしょうな。

 

 オーウェルってスペインでの経験で反共産主義になったらしいってことは知っていたけど、POUMが共産勢力のせいで弾圧されることになるバルセロナでの内紛でも銃をとっているんですよね。ゲーム「Land and Freedom」でも共産主義者が使えるカードとして、バルセロナでの内紛やPOUMの非合法化なんてのがあります。『カタロニア賛歌』を読んだ後だともうこの二つのカード、怒りしか湧いてこない…。


 でもオーウェルの文章は共産主義者を声高に批判する感じはなく、あくまで抑えた筆致の印象。POUMが弾圧されている間も民兵たちは共和国を守るために前線で戦っていて、後方では新聞が自分たちのことをファシストと呼んでいることを知らずに死んでいった兵士が多くいたはずだ、とは述べています。その後にThis kind of thing is a little difficult to forgive.って書いていて、イギリス人がこういう書き方をしているってことは心底憤っているんだろうなと思えて、オーウェルの悔しさがひしひしと伝わってきました。

 こんな感じでスターリン主義者への怒りを抑えて書いていたのかな、と思っていたら、最後にappendixとして2章がついていて、共産主義者たちがいかにPOUMに罪を擦り付けたかをガンガン書いていました。

 あくまで冷静かつ客観的な姿勢は保ちつつ、The accusation of espionage against the POUM rested solely upon articles in the Communist press and the activities of the Communist-controlled secret police.とか述べています。

 この2章はもともとは本文の途中に入っていたんだけど、オーウェル自身の判断でappendixとして最後にもってこられたらしい。内容がかなり政治的で、基本的に自分の体験をつづった他の章とはまったく雰囲気が違うからなあ。でも勉強になりました。共和国側内部での勢力争いについて言及しつつ、でも戦争に負けてしまったら民主主義や革命、社会主義や無政府主義などは無意味な言葉になってしまうと述べていて、これってまさにゲーム「Land and Freedom」じゃないですか。


 ということで、本文とappendixは別作品のような印象を受けますが、逆に一冊で2作読めた感じでお得な気持ちになれました。しかしオーウェル、生き様がかっこいいわー。


2023年8月21日月曜日

グルーシーのイチゴ

「Napoleon 1815」(Shakos)と言ったら小さなウォーゲーム屋さんで日本語版が出ていますが、「Napoleon 1815」のマップに苺が描かれているのはなぜ? というつぶやきがあったので興味をひかれて調べてみました。


どうやらグルーシーに由来するんじゃないかなと。ブリュッヒャーを探していたグルーシーが、ワーテルローの砲声が聞こえてきたのにゆっくり食後のデザートのイチゴを食べていて戦いに参加できなかったと伝えられているようで、Les fraises de Grouchy(グルーシーのイチゴ)っていう言葉もあるようです。
Wikiにもこのことが書かれていますね。

Emmanuel de Grouchy — Wikipédia (wikipedia.org)


↓ここのイラストでは「元帥! 苺で遊ぶのはおやめください。間に合いません」って言われていますね。

Site en maintenance | historia.fr

(すみません、サイトはメインテナンス中になっていますね)

『グルーシーの苺、もしくはワーテルローにおけるナポレオンの敗北の秘密』なんて本も出ているようです。

Amazon.fr - Les fraises de Grouchy: Ou les secrets de la défaite de Napoléon à Waterloo - Le Tulzo, Gérard - Livres

日本語の書籍にはこのグルーシーのエピソードが書かれているんでしょうか。ご存じの方、いらっしゃったら教えていただけると嬉しいです。

ちなみに、ベルギー南部ワロン地方は苺がよく採れ、ワーテルローがあった6月は苺が美味しい季節だそうです。Napoleon 1815のマップにはNamurが含まれていますが、その南近郊にはイチゴ博物館があります。

Musée de la Fraise | Fraise Wépion | Namur | Belgique (museedelafraise.com)


グルーシーの故事にちなんで、ワーテルロー戦のゲームをやるときは英軍プレイヤーは相手のためにイチゴを用意してあげるといいのでは。仏軍プレイヤーに「ゆっくり召し上がれ」って言うと盛り上がるかもしれませんね。


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8月23日追記


Twitterでグルーシーについて教えていただきました。

この「グルーシーの2日間」は、詳細な分析をもとに、グルーシーを無能と決めつけるのはよくないのでは、とざっくりいうとそんな内容なんですが、ちょっと調べて、こんな記事を見つけました。

https://www.lefigaro.fr/histoire/2015/06/19/26001-20150619ARTFIG00106-waterloo-grouchy-fut-il-la-cause-de-la-defaite.php

「ワーテルロー:グルーシーが敗因だったのか?」っていう記事で、筆者はdirecteur de la Fondation Napoléonなのでナポレオン財団の理事って言えばいいんですかね。ナポレオンの回顧録以来、ワーテルローはグルーシーのせいで負けたと歴史家は考えていたけど、近年はワーテルローの敗因をグルーシーに帰す傾向が弱まっているそうです。

その理由として以下のことを挙げています。

①Lignyの戦いの後、普軍追撃の命令をナポレオンが下すのが遅かった

②ナポレオンはグルーシーを呼び戻すよう明確に指示したことはなかった

③グルーシーがWaterlooに行くにはDyle川を渡る必要があり、10キロ離れたWavreの橋を確保しないといけなかったが、普軍はそこを固く防御していた。なので、(上記「グルーシーの2日間」にもあるように)グルーシーは到底ワーテルローの戦いには間に合わなかっただろう。


そもそもナポレオンはウェリントンのことを舐めていて、ワーテルローの朝、スールトがグルーシーを呼び戻すように進言したところ、却下したそうです。その際、「Ce sera l'affaire d'un déjeuner」と言ったそうですけど、意訳すると「朝飯前だ」ぐらいの感じですかね。

みなさんもワーテルロー戦のゲームで仏軍をプレイするときは皇帝になった気分で「ス・スラ・ラフェル・ダン・デジュネ」って言ってみてください。…、いや、そんなこと言っちゃダメだろ。

2023年8月18日金曜日

「Land and Freedom」関連書籍その3 『誰がために鐘は鳴る』

  ゲーム「Land and Freedom」ではヘミングウェイがカードになっていますが、そういやヘミングウェイがスペイン内戦を舞台に書いた『誰がために鐘は鳴る』って、恥ずかしながら読んだことがなかったです。ノーベル賞作家の代表作の一つってされているそうなんですけどね。



 ヘミングウェイはスペイン内戦中の1937年にスペインを訪れ国際旅団に関わり、1938年にはスペイン内戦における最大の激戦であるエブロ川の戦いも見ている。1920年代にもスペインを訪れていて、結構あの国が好きだったみたいですね。

 で、『誰がために鐘は鳴る』なんですけど、舞台はスペイン中央部、マドリードの北のほうの山岳地帯。内戦が始まって1年弱のころ、共和国側に立って戦っている主人公のアメリカ人ロバート・ジョーダンは、共和国軍の攻勢開始に合わせて敵後方の橋梁を破壊する任務を受ける。現地のゲリラ部隊の協力のもと、橋梁爆破のための準備を進めるのだが…というストーリーで、結構分量がある作品。自分が読んだのはペーパーバック版だけど、490ページありました。でも物語上では4日間の話なんですよね。



 この作品の文学的評価はいろんなところで書かれていると思うのでそれは置いておいて、ウォーゲーマー的には、ハインケルHe111やフィアット戦闘機が飛んでたり、ソ連から派遣されたであろうロシア人の将軍が出てきたりするところに反応してしまうんじゃないですかね。トハチェフスキーの名前もちらっと触れられていました。あと、主人公に若い彼女ができるんですけど、こんちくしょうってウォーゲーマーだったら思…わない思わない、私だけですよね、そんなこと考えるの。

 この作品の時期の3か月ほど前にグアダラハラの戦いっていうのが実際にあったんですけど、共和国軍はファシスト側のイタリア軍部隊を撃退しているんですね。この作品中でもグアダラハラの戦いに触れたところで、敵がイタリア軍だって知っていたから、他の軍隊相手だったら到底やれない機動をして勝った、みたいなセリフがあって、あー、イタリア軍ねって思ってしまいました。あと、主人公の祖父は南北戦争で従軍したってことになっていて、グラント将軍がいつも酔っぱらっていたとかそういう話も出てきます。

 

 それと、スペイン内戦時のヨーロッパ情勢を知っていると、あー、そうねって思うところが結構あるんですよね。「もしフランスが我々を助けてくれていたら、国境を開けてくれてさえいたら」なんてところを読むと、不干渉委員会なんて作って英仏はファシスト陣営を利するだけだろ、でも翌年にはミュンヘン会談があって共和国の人々は裏切られたって絶望するんだよな…と思ってしまいました。


 ところどころQué vaとか短いスペイン語が出てきて、スペインっぽさを感じます。それと、登場人物のセリフの中でThou artとかDost thouとかtheeとか、自分はなんか古い英語だなって感じる表現が結構出てくるんですけど、方言を話していることを表そうとしてるんですかね。でもジョージ・オーウェルの『カタロニア賛歌』では、共産主義者や無政府主義者が支配的になったバルセロナでは相手のことをComradeとかThouと呼ぶようになった、って書いているから、そういう雰囲気をだしているのかな。和訳ではどうなっているんだろ。あと、主人公のロバートはスペイン人にはInglés(English)って呼ばれているんですけど、和訳だとどう表現しているんですかね。イギリス人? あと、彼の名前はRoberto(ロベルト)って言われていました。それと、作中ではお互いにSaludって挨拶するんですけど、ジョージ・オーウェルの『カタロニア賛歌』ではBuenos diasの代わりにこう言うようになった、って書いていますね。


 作中ではワインを飲むシーンが結構出てくるんですけどね、優雅にボトルからワイングラスに注ぐなんてことしないんですよ。dipped his cup into the wine bowlって、ワインの入ったボウルからコップで掬ったってことですよね。それとwineskinって、ワインの入った革袋から飲んだりしているんですよ。読んでいて赤ワインが飲みたくなってきて、でもたまたま近所の店でスペインのビールが安く売っていたのでそれを飲んだりしていました。Estrella Dammっていうバルセロナのビールで、バルセロナっていったらスペイン内戦中は共和国側の有力な拠点の一つだったわけで、共和国のために戦っている物語を読んでいるだからいいでしょと自分に言い訳してがぶがぶ飲んでしまいました。というわけで、赤ワインかスペインのビールの飲みながら読むに結構いい本だと思います。このブログもワイン飲みながら書きました。

2023年8月15日火曜日

青い鳥を孵化させる―『ツイッター創業物語』

  ツイッターって便利ですよね。ウォーゲームについてつぶやいたら海外のデザイナーさんから直接レスポンスが来たりとか、意外なところでつながれるのがうれしい。

 そのツイッターがXになってもう青い鳥のアイコンがなくても違和感を覚えなくなったころに何ですけど、そういやツイッターってどういう経緯で生まれたんだっけなと、昔読んだ『Hatching Twitter』という本をざっと読み返してみました。


 この本、和訳は『ツイッター創業物語』ってタイトルになっていて、そのとおりツイッターの立ち上げ時のルポ。でもね、tweetって小鳥のさえずりのことで、hatchって鳥とかを卵から孵化させるって意味があって、『Hatching Twitter』ってタイトルはほんとうまいなーって思っていたんですよね。和訳のタイトルは何のひねりもないものになっていますが、まあ日本のマーケットを考えると仕方なかったんですかね。和訳読んでいないのにいちゃもんつけるようなこと言ってすみません。

 

 まあそれはさておき、この本、面白いんですよ。単純に読み物としてすらすら読んでいけるような書き方しているんですよね。真面目な分析というよりは、コミカルなドラマを見るような感じで読めました。

 もちろん、ツイッターが全然知られていないころから急激に利用者数が増えててんやわんやする様子とか、スタートアップの本として内容的に興味深いです。個人的に、エスタブリッシュメントの中にいるよりは、この先どうなるかわからないけど新しいことをやってみるほうが面白いぜ、という考えに共感するほうなので。まあ、そのおかげで今までやらなくてもいい苦労をしてしまったぜよ…。それと、昔ドイツ人の知り合いに「僕は不安定さ(Instabilität)を楽しみたいんだ」って言ったら、「そういう時は不安定さじゃなくて自由(Freiheit)って言うのよ」って訂正されて、ちょっと違うんだよな…って思ったことがありました。


 そんなことよりも、この本ではTwitterって名づける前からの立ち上げの様子から、2012年初頭あたりまでが描かれています。一応、表紙にはA True Storyって書いてありますし。元従業員など多くの関係者にトータルで数百時間インタビューしたそうです。青い鳥のアイコンが消えてしまったこの時期に読むのはいいんじゃないかな、と。

 あと、本筋とは全然関係ないけど超絶かわいい女性が出てきて、彼女がほほ笑むと通りを走る車がみんな止まってしまうぐらいだった、みたいなこと書かれていて、どんな人だったのか見てみたいぜって思ってしまいました。


 読んでいて思い出したのが、昔仕事でTwitterのことを記事にしないといけなくて調べていたことときのこと。その当時はまだ日本ではマイナーで、でもアメリカのテレビ番組の司会者が番組最後に「Tweet me」って視聴者に言ったりしていて、あーアメリカでは盛り上がっているんだなって思った記憶が。2009年のイラン大統領選のときもその影響力を目の当たりにしたなあ。

 それと、昔Time誌でSNSの記事があって、主要なSNSを図にしていたけどFacebookがSNSのひいじいちゃんって書かれていて、まじ、もうそんなに世代が進んでんのって驚いたことがあった。すんません、情弱なんで。でもそんな新陳代謝栄枯盛衰が激しい世界で生き残っているツイッターってすごいな、と。イーロン・マスクが変なことをしてしまわないように願っています。


ライプツィヒの戦いについて手軽にまとまった本を読むならー『ライプツィヒにおける諸国民の戦い』

  1813年10月18日の朝5時ごろ、アウグスト・フォン・グナイゼナウは妻に手紙をしたためていた。  「世界の歴史の中でこれまでほとんど起こらなかったような戦いをむかえる朝に、これを書いている。我々はフランス皇帝を完全に包囲した。この戦いはヨーロッパの運命を決定づけるだろう」 ...